DGベンチャーズは、創業当初より「次世代を担うテクノロジーの支援」を目指し、投資事業を展開してきました。

 

近年特に成長が期待できる領域のひとつが不動産×テクノロジー。

 

紙が中心となっている建物管理業務をテクノロジーの力で効率化し、顧客の事業成長を支援する株式会社THIRD(以下THIRD)。

DGベンチャーズの出資先であり、不動産領域に特化したデジタルガレージのアクセラレータプログラム「Open Network Lab Resi-Tech(以下Onlab Resi-Tech)」第1期最優秀賞受賞企業でもあります。

 

今回は、THIRDとデジタルガレージグループの歩み、今後への期待について、THIRD代表取締役社長の井上 惇氏(以下井上氏)と、Onlab Resi-Tech参加時よりサポートしてきたデジタルガレージ(以下DG)のグループCEO本部DX推進事業部長 兼 Pangaea事業部長 横山 泰弘(以下横山)との対談をご紹介します。

 

 [株式会社THIRD]

不動産業界/建築業界の非効率な業務を改善し、不動産管理業界のDX推進を後押しするAI不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」を提供。不動産・建築業界の透明化を通じて業界全体の取引を活性化する事を目的とする企業です。Onlab Resi-Tech第1期コーポレート部門最優秀賞、オーディエンスアワードのダブル受賞

(左から、THIRD井上氏、DG横山)

事業の追い風を受け、実現すべき未来の確信を得られた

− Onlab Resi-Tech第1期への参加でどのような影響がありましたか?

 

THIRD井上氏:

参加前後で会社のステージが大きく変化した実感があります。

 

まずはプロダクトの精度が向上する機会になったことです。すでに開発済みのプロダクトを携えて参加しましたが、プログラム期間内で受けたメンターのフィードバックにより、AIの解析モデルの向上ができたと思います。

 

また、最優秀賞を受賞したことでメディアにも取り上げられ、協賛企業はもちろん、新規の問い合わせからの事業機会も増えていきました。同時にDGグループのネットワークを通じて、THIRDだけでは辿り着けない大手企業との取引も増えたと思います。

 

− Onlab Resi−Tech参加後の事業推進を通じてさらに見えてきた事はありますか?

THIRD井上氏:

「管理ロイド」は不動産管理の現場が紙とファックスを用いた昔ながらのオペレーションであることに着目したプロダクトです。いわゆる企業のDX推進に貢献するものですが、事業と顧客に向き合ううちに「ペーパーレス化した先」が見えてきました。

 

不動産管理は、メンテナンス業務を通して建物のあらゆるデータを横断的に集める事ができると考えております。つまり、分析をすれば不動産開発へのデータの応用など様々な分野に活用できるビッグデータです。

 

しかしこれまで紙で管理していたことで、整理されたデータとして蓄積が行われず、その可能性が摘まれている状況でした。また、セキュリティの観点から、長らくビル運営に関する情報は建物毎に閉じている状況でした。

 

設備機器単位の情報は、各設備機器メーカーが保有しているケースが多いですが、通常建物は様々なメーカーの設備機器が組み合わさって一つの有機的なシステムを構成する事が一般的です。

これら設備機器を横断した建物のデータは今まで紙で保管されていたため活用ができていない状況でした。

 

そこにすべて一括で管理できる「管理ロイド」を導入することで、建物の横断データが整理された状態で可視化する事ができるようになります。これらのデータは、不動産管理会社様の労働生産性改善のために活用されるだけでなく、ミスの抑制、管理品質の向上、予防保全に活用するバックデータなど様々な価値を生むことができます。

 

日本の不動産開発は、新築至上主義のスクラップアンドビルドの傾向が強かったと思います。ただし、世界の不動産流通を比較すると新築は少なく、中古の流通不動産の方が多いんです。こうした流れは日本でも起き始めており、中古の不動産流通市場が大きくなると必然的に築古の不動産が増えることが予想されております。そのような場合、不動産のメンテナンスコストが増えるため、管理ロイドで集めている建物のあらゆるデータを活用する事で、新たな価値を定義づける礎になると考えています。

課題の解像度と課題解決に取組む熱量にかける期待

ー Onlab Resi-Tech参加時から支援してきて、印象的なことはありますか?

 

DG 横山:

THIRDはOnlab Resi-Tech参加企業の中でも現場課題の解像度の深さとその解決にかける熱量が印象的で最優秀賞を獲得した決め手になったのではないでしょうか。

井上さん自身もビル管理の現場に入り、作業する方の業務に同行されたり、一緒に作業してみたりされていましたよね。

丁寧に拾った現場の声を速やかに反映し、プログラム参加時と比較して現在は大きく進化したプロダクトになっている事に驚いています。

 

ー 今はどのような支援をしているのでしょうか?

 

DG 横山:

大手企業の紹介をはじめ、事業面の支援を行っています。

 

THIRDがアプローチできない事業会社を紹介していますが、どのように最短でパイプラインを獲得していくのかを考え提案をしています。

 

DGグループは2020年に本社を渋谷PARCOに移転しましたが、その際にもTHIRDに関わってもらいました。詳しくは申し上げられませんが、今後の事業発展につながる可能性のあるサービスです。その他にもデジタルガレージの事業部と進めている協業のアイデアもあり、いま撒いている種がどのように花開くのかを楽しみにしています。

 

データを活かして不動産業界のDXを牽引、二人三脚での歩み

ー いま挑戦したいテーマはなんですか?

 

THIRD井上氏:

繰り返しになりますが、データを活用して不動産業界・建築業界全体の活性化をできるようにしていきたいと思っています。

 

現在どの業界でもマーケットインの視点を大切にされていますが、不動産業界はいまだ立地のグレードと建築物の新旧で価値が決まるプロダクトアウト型の市場だと考えています。

もちろん、建築時点でコンセプトを明確にした場づくりを打ち出している建物もありますが、リモートワークなどが普及することによってライフスタイルが多様化し、その影響を受けて住環境、仕事環境などに対するユーザーニーズをくみ取る不動産が出てきても良いのではないかと思っています。

都心一極集中型の不動産開発や中古不動産の流通の構造が変わる可能性もあるとおもっており、中古の物件のリノベや用途変更などを行った再生物件の利活用などの案件も増えてくるのではないでしょうか。

不動産と工事は切っても切れない環境である事も面白いポイントです。現在弊社は、それまで蓄積してきたデータやノウハウを活かして、工事の外注費の適正化サービス「工事ロイド」を現在開発中です。

修理修繕費などの建物に付随する工事費用の適正な価格をAIによって算出するというもので、不動産管理会社様の経営改善に貢献できる重要な部分だと考えます。

これは管理ロイドが1,000社以上に導入され、様々なデータが蓄積されてきている弊社だからこそできるサービスだと自負しており、今後、それらのデータを活かし、店舗設備管理などへも裾野を広げていけたらと思っております。

 

ー最後に、DGグループへの今後の期待を聞かせください。

 

THIRD井上氏:

横山さんとDGベンチャーズの吉崎さんには毎週の経営会議にも参加していただいているなど、親身に対応いただいており、いつも感謝しています。もしまた起業することがあれば、またDGベンチャーズに出資してもらいたいです。

 

不動産領域の広告や決済を扱うDGコミュニケーションズとの相互送客など、他社VCではできない提案もあり、私たちのビジネスはDGグループを起点に広がっていると言っても過言ではありません。

 

今後もDGグループとの連携を進め、長期的なシナジーを実現することで、不動産業界のDXを牽引する存在を一緒に目指していきたいです。

 

ー ありがとうございました!

 

Onlabによる同社へのインタビューも是非ご覧ください。(前編はこちら、後編はこちら